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小説もどき南米編

28

塚田は持ち込んでいた振り出し式のカーボンロッドにABU7000Cを取り付け、手早く浮き釣り仕掛けをセットした。
「ほいじゃ、ちょっと行ってきますわ。今夜は刺身作りますよ。」
「おう、気をつけてな。そうだ、そこの冷凍庫にイカが入ってる。餌に使っていいぞ。」
「お、有り難い。小魚釣る手間が省ける。」
塚田は指し示された小型冷凍庫を開けると、小分けされたイカの一包を取り出し、港長事務所の玄関から出て、岸壁の方に歩いていった。観光客がゾディアックに乗るための桟橋から離れた、給油岸壁の端まで歩き、まだ融けきっていない小型のイカを短冊切りにしたものを釣鉤にかけ、仕掛けを放り込んだ。
この島は海鳥が多く、注意していないと投げ込んだ仕掛けを空中で鳥にキャッチされる。また餌を浅いところに置くと、空中からダイブして餌をくわえる。
仕掛けを投入して間もなく、警固の腕章を付けた下士官がやってきて、釣りは禁止だ、と塚田を追い払おうとした。塚田は書類を見せて、そういうわけだから、まぁ見逃せや、と言うと、下士官は敬礼して、失礼しました、と立ち去ろうとした。
「ああ、ご苦労さん。1時間くらいしたらまた来てみてくれ。君等にもおすそ分けができるかも知れん。」
「了解です。ではご武運を。」
下士官が立ち去った直後、仕掛けに当たりが来た。一瞬で消し込まれた浮きにあわせて、軽く合わせをくれて、かなり強い引きを楽しみながら、慎重に寄せてくると、60Cmはあろうかという、型のいいサワラが掛かっていた。この国でセロと呼ばれるサワラはどう食べても美味しいので、人気が高い。
サワラは群れでいるので、手早く仕掛けに餌を付けて、第二投を投げ込んだ。今度は間を置かず、当たりがあった。やはり同じサイズのサワラだった。これで今夜のアテは十分だった。ここから後は、警固の下士官たちへのおみやげ釣りだった。2時間ほどサワラ釣りを楽しんだ結果は、60Cm級6尾、80Cm級2尾の満足逝く結果だった。
付近に居た水兵を呼んで、警固の下士官を呼んでくれ、と頼み、下士官が来るのを待った。その間にももう1尾追加した塚田は、下士官が来ると、約束のおすそ分けだ、と自分たちの分に60Cm級2尾を残し、全て下士官に持たせた。下士官は彼を呼んだ水兵を呼び、魚を厨房へもってゆくように命じた。水兵は心持ち軽い足取りで魚を両手にぶら下げて厨房にむかった。
「インヘネイロ、有難うございます。今夜はうまい飯が食えそうです。」
「いや、たまには良いんじゃないか。おお、そうだ、君等も刺身を食べるかね?」
「刺身って、あの日本料理の生の魚ですか・・・食べたことはないですけれど、ヤメときます。セビッチェの方が私は合ってますから。」
「なんだい、食べず嫌いかい。ま、仕方がないか。海育ちじゃなさそうだし。」
「ええ、私はアンバトの生まれでして・・・」*アンバトはアンデス山脈の中の盆地にある街
「まぁ、食べたくなったら、中佐の居住区に来たらいい。私が作るから。」
「有難うございます。頂いただけで十分です。」
「それならいいけれど。遠慮しなくても良いからね。」
下士官は実に色気のある敬礼を塚田に送ると、足早に居住区の方に去っていった。塚田は取り分の魚をぶら下げ、切って残った餌を海に投げ込み(そのまま置くと鳥が食べる。餌付けは禁止されている。)士官居住区に向かって歩き出した。頭上を舞う軍艦鳥が塚田の持つ魚を狙って、時々急降下してくるのを釣竿で振り払いながら士官居住区に着くと、共同調理場に入り、サワラを捌き始めた。
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小説もどき南米編

その27

貨物船は「南昌23」で間違いなかった。船籍国は北朝鮮であった。推進軸を損傷した貨物船は自力航行が不能なため、最寄の海軍基地である、ガラパゴス諸島、バルトラ港へ曳航される事になった。乗組員は全員拘束され、船内
で拘禁されていた。艦長は船内捜索と積荷の捜索を命じ、また、船長と一等航海士を尋問、船の航海日誌等の書類調べも同時に行った。書類によれば、北朝鮮の港を出港後、バヌアツ、チリのバルパライソ、ペルーのパイタの各港を経由して、この海域に至ったようであった。ここから後は寄港地は無く、直接北朝鮮に戻るようになっていた。
積荷は袋積みの穀物類や冷凍コンテナに収納された冷凍畜産品、海産物などであった。
船内捜索、積荷の封印を切っての捜索は徹底を極めた。バルトラ港までの曳航中のほとんどの時間がそれに当てられたと言って良かった。この捜索の結果、船倉にあった木箱の中からRPGを含む武器、弾薬数十丁分が発見され、また、船倉内に収められた冷凍コンテナ下の二重底部分から、数トンはあろうかと思われる量の粗製コカインが発見された。この貨物船が逃走を図ったり、抵抗をしたのはこの積荷のためだったと思われる。
問題はこのコカインがどこで積まれたのかだった。寄港地の港で積み込むのはかなり難しい。現在、南米の港は、企業所有の港湾施設であっても、ナルコと呼ばれる、対麻薬密輸警察が拠点を置いている。特に太平洋岸の各港ではコンテナの全数検査まで実施しているのだ。ここから麻薬を隠したコンテナ積出は非常に難しい。となれば、麻薬はバラで積まれ、コンテナを船内で加工したと考える他無い。
艦長はこの貨物船の航海経路を調べるよう命じた。船にはSSASと呼ばれる、対海賊用の自動位置通報装置が設置されていたが、故障の札が張られ、電源は落とされていた。GPS装置には経路の軌跡が残るが、それも消されているようだった。残るはVDRと呼ばれる、船舶情報自動記録装置だったが、これの解析には専門知識が必要だった。
航海日誌はパイタを出港後、この海域に到達するまでに4日間かかっていたが、普通の航海速度であるならば、これは不思議ではない経過時間だった。
このVDR解析の専門知識を持つ人間は、エクアドルには一人しか居なかった。塚田である。このため、海軍は塚田をガラパゴス諸島のバルトラ港まで送った。
バルトラ港のカピタニア(港湾署)の長は塚田が知った人間だった。
「カピタン・バスケス、お久しぶりです。いかがですか、ガラパゴスは。」
普通の階級で言うバスケス中佐は元潜水艦乗りで、中佐になって岡に上り初めての陸上勤務が、このバルトラ港の港長だった。塚田とは潜水艦副長時代からの付き合いだった。
「おお、塚田、こちらこそ久しぶり。うん、アシカと鳥たちと暮らすのもなかなかのんびりできて良いもんだ。」
「そりゃ良かった。もうアシカには何匹か恋人ができたんでしょ。」
「いぁ、人間よりも難しいね。なんせここに上がってくるアシカは誰かのハーレムの一員だからね。ハーレムの雄と実力で奪い合わないとならん。」
「おや、あたしはてっきりここでも浮名を流しているもんだとばかり・・・」
「いや、なかなか、こちらにも、こちらの仁義があってね。」
このバスケス中佐の妻君は、元国防長官、退役提督の娘で、二人の娘ともども溺愛と言っていいほどの愛妻家であった。
「ところで、冗談はさておいて、例の貨物船の件か?」
「ええ。データー解析できるのが私だけらしいんで・・・」
「ご苦労だなぁ、ほんとに。なんか聞いたところでは厄介ごとに巻き込まれているんだって?」
「ええ、そうなんですよ。まぁ、海兵が護衛してくれているんで、今のところ大事には至っていませんがね。」
「ああ、マギノ大佐の手下どもか。まぁあいつらなら安心だな。」
「ええ、なかなか優秀ですね。今も、借りた家にうちのエンプレガーダと一緒にいるはずですよ。あたしはヘリでそのまま基地へ向かって、空軍機でここまで来ましたが。」
「おいおい大丈夫か、女性一人に海兵なんて。」
「大丈夫みたいですよ。うちのエンプレガーダ、なんか昔陸軍に居たみたいですし、海兵連中を顎で使ってますから」
「なんだ、そりゃ。えらい女丈夫じゃないか。」
「なんか陸軍の退役時に曹長だったそうで、海兵連中、みんな先に敬礼してますわ。」
「なんとまぁ・・・・まぁ、いいや、ところで、その貨物船だが、入るのは今夜以降だそうだ。まぁ、コルベットで7000トン級の貨物船曳航してるわけだし、そうそう予定通りには往かんわ。」
「ま、ここでカピタンとダベリながら待ちますよ。」
「おう、カフェくらいなら幾らでも飲んでくれ。アルコールは夜までお預けだ。」
「へぇへぇ。釣りでもしてくるかな?」
「おい、ここは釣り禁止だぞ。」
「いぁ、港長の特別許可でも貰えば大丈夫でしょ。歓迎用夕食とでもしといてくださいな。」
「ったく、しょうがねぇなぁ。ちょっと待て。期間は1週間くらいでいいか?」
「ええ、十分でしょう。」
バスケス中佐は手元の用紙に必要事項を記入すると、所属印を押した上に、サインを書き入れた。

小説もどき南米編

また更新が滞ってました。
すみません。

その26
その頃、貨物船の速度は25ノットを超える速度に達していた。明らかに普通の貨物船では無かった。「Los Rios」を含む「Esmeraldas」級コルベットは最高速度36ノットを誇るが、そのためには舷側にあるフィン・スタビライザーが動作することが必須だった。でなければプレーニング現象で船体が浮き上がり、僅かな横波で転覆する恐れがあった。重武装トップヘビー艦の宿命だった。しかし、この時「Los Rios」のスタビライザーは動作していなかった。この状態で可能な最高速は26ノットまでであったのだ。それでも商船相手の警備行動なら十分以上だったが、この相手は普通の商船では無かった。徐々に距離が離れだし、追跡開始から30分が経つ頃には、彼我の距離は2海里を超える処まで開いていた。このままの速度で追跡可能なのは最大6時間程度。それを超えたなら帰りの燃料が怪しくなる、と艦長が考え始めていたときだった。艦橋上部の見張員が叫ぶ声が聞こえた。
「ゾディアック、貨物船から離れます。」
ゾディアックの臨検要員がやっとの事でもやい綱の切断に成功したのだ。艦長はゾディアックが射線上から離れ次第、船体へ向けての発砲を命じた。ただし、流石に76mm砲では威力がありすぎるため、後部搭載の30mm連装機関砲が一杯まで前方に砲身を振り、対応しようとしていた。艦長は後部砲の射界を確保するため、左舷に20度ほど転舵し、発射を命じた。一門当たり分120発、二門で240発の30mm徹甲弾が貨物船めがけて飛翔して行く。そして貨物船後部に着弾の火花が発生した。しかしそれでも貨物船が止まる気配は無かった。貨物船は後部砲塔からの射撃であることを理解しているらしく、僅かに左舷に針路を変えて射界から逃れようとしていた。
艦長はこれを見て、右舷転舵40度を命じた。しかし、これは簡単では無かった。「Esmeraldas」級コルベットは、非常識とも思える重武装艦であった。僅か800t程度の艦に前部76mm速射砲1基、後部に連装30mm砲塔1基、エグゾセMM39、3連装発射機2基、アスピーデ対空ミサイル4連装発射機1基、324mm3連装対潜魚雷発射機1基、加えて、これらの射撃管制装置2基、警戒用Lバンドレーダー1基、オリオンECM装置、航海用レーダー、その他が搭載されており、加えて艦後部にはヘリ着艦用甲板を一段高く装備しているのだ。26ノットのスタビライザー無し最高速度で急転舵を行えば艦が転覆する恐れがあった。しかし、同一艦勤務5年を超える下士官操舵手は、この難しい命令を、こなしてみせた。
右舷転舵に成功して、再び射界を確保できた後部30mm連装砲塔は、貨物船後部に向かって再び射撃を始めた。今度はなるべく水線に近い部分を狙っていた。単軸と思われる推進器に損害を与え、船の行き足を止めるためだった。すでに有効射程ぎりぎりではあったが、この射撃は成功し、貨物船がそれまで高く蹴立てていた艦尾波が消滅、みるみる速度を落とし始めた。そしてコルベットが貨物船右舷に並び掛ける頃には、完全に停船していた。
「Los Rios」は貨物船から800mほどの安全距離を取って極微速で貨物船と並行していた。貨物船上には全く人影が見えず、拡声器で命じた全乗員上甲板へ整列、両手を舷側より上に出せ、という命令を完全に無視していた。

艦長は、艦橋上部に人員を配置、M-2機関銃(7.62mm)2丁とFN-FAL装備の海兵4名が貨物船に銃口を向けていた。さらに追随していた臨検班のゾディアックに強制乗船を命じ、ゾディアックは警戒しながら徐々に貨物船に接近していった。ゾディアックが300mほどの距離に近づいたとき、船橋下の貨物甲板と貨物甲板前部から同時に小銃と思しきものを構えた船員が現れ、ゾディアックに向かって発砲した。これを視認した艦橋上配置員の先任下士は、艦長の命令を待たず、M-2機銃員に発砲を命じた。曳光弾の混ざった射撃が正確にゾディアックに向かって発砲した船員に向かって行き、すぐに船員は物陰に引っ込んだ。幸いゾディアックへの被弾は無く、船外機の回転を最大まで上げて、艦の陰に逃げ込んだ。
この時点で艦長はゾディアックによる移乗を断念、コルベット自体を強制接舷させて制圧する作戦に切り替えた。ただちに、乗員によって右舷側に応急の防御物が配置され、RPGなどの直撃があっても、被害が拡大しないような対策が行われた。そして、その完了を待って、一気に自艦を貨物船左舷に接舷させた。
コルベットが接近すると、それまで船体構造に隠れていた、武器を持った船員たちが、コルベットに向かって射撃を開始した。コルベットからも、艦橋上に配備された射撃要員がそれに応射してゆく。
コルベットの艦橋上部、というか、上部構造物上には1mほどの胸壁が構造物全周にあり、その2/3程の高さまでがボックス構造になっている。このためアルミ製構造ではあったが、小銃弾程度では貫通はできなかった。そこに機銃を据えて撃っている射撃要員たちの狙いは正確だった。貨物船上で射撃をしていた船員の何人かが射撃の火線に捉えられ、倒れていた。
鋼鉄の船体同士がこすれ合う音と共にコルベットが接舷すると、一段高くなっているヘリ甲板から、制圧員が貨物船へ移乗して行く。海軍だけに陸軍並の装備をしているのは6名が乗り組んでいる海兵隊員だけだったが、それ以外の甲板員も、防弾チョッキとFN-FALを手に貨物船に乗り移って行く。ブリッジのある後部甲板は、すぐに制圧されたが、前部錨甲板下に何人か残って抵抗を続けている。左右舷にある、錨鎖庫へのアクセス扉に隠れ、散発的に射撃を続けているのだ。後部甲板から、ここへ接近するためには、船倉脇を通るしかなく、それだと直接火線に晒されるため、接近が出来ないでいた。しかし、コルベットからの機銃による制圧射撃で頭を下げさせておき、3名の海兵隊員が死角に取り付く事に成功した事で、船内は完全に制圧された。この一連の戦闘で貨物船船員が2名死亡していた。コルベット側には若干の軽傷者が出たのみだった。

小説もどき南米編

さてはて、大変お待たせしました。続きがある程度貯まりましたので、またうp再開します。
ネタはやっぱりあまり無いのですが、最近のトピックを少々取り入れてます。

その25
例の家に帰った塚田は、お手伝いさんに食事の支度を頼んだ。
「グラシエラ、ちょっと遅いけれど、昼ごはん頼むよ。」
「シ・セニョール。今日はレングア(牛タン)のセコ(香辛料で煮る料理)ですよ。今温めますね。」
しかし、女房が帰って来たら目を回すだろうな、と塚田は思った。台所の一角にはFN-FALと予備弾倉、手榴弾などが入ったコンバットベストが掛けてあり、彼女の腰には塚田の持ち物のタウルス社PT110、9mm口径拳銃がミリタリーホルスターに入って吊られていた。左腰にはバヨネットまで吊って居る始末だ。
しかし、彼女は嬉々として状況に適応していた。「セニョール、お食事の支度ができました。あと、中尉さんと曹長もご一緒するそうです。」台所のテーブルには3人分の支度がきちんとできていた。彼女は余ったレングアの鍋を持って、海兵たちのたまり場になっている、サンルームへ歩いて行く。鍋もいつ買ったのか、今まで見たこともない、大きな寸胴鍋だった。
塚田がテーブルに付くと、程なく中尉と曹長が入ってきた。海軍さんらしく、食事時にはきちんと服装を整え、席に着く前には、同席者に「ブエン・プロベチョ」と声を掛けてから席に着くマナーは、こんな処でも律儀に守っていた。
「セニョール塚田、ここの飯は最高ですね。別に高価な食材を使っているとは思わないんだが、美味い。不思議だ。」
「中尉、それはうちの女房のせいですよ。彼女は何故かしらんけれど、すばらしい味覚の持ち主でね。」
「ほう、すると、ここの食事は全て奥さんの味なんですか?」
「ええ、そうです。グラシエラも最初に来た頃の料理はお世辞にも美味いとは言えなかった。女房が根気よく彼女の味付けを直したんです。」
「そりゃ凄い。この件が落ち着いたらレストランでも開いたらどうです。?」
「以前考えた事はあるんですがね。儲からなさそうなんで・・・」
「いや、この味なら流行りますよ、きっと。」
「そうでしょうかね?意外とエクアアドルの人は、味には頑固だと思っていましたが・・・」
「そういう面は否定しませんが、美味いものは美味いですから。」
そんな会話をしながら、食事を終えた塚田たちは、居間に移動して食後の珈琲を楽しむことにした。この珈琲も塚田の妻の見立てで、ペルーに近いロハという町で栽培されたものだった。エクアドルには海岸に近い高地があり、ある意味、ジャマイカのブルーマウンテンよりも珈琲栽培には適した気候と言えた。朝晩、霧がかかり、また昼は赤道直下の太陽が照りつける気候は、珈琲の原産地であるエチオピアの紅海沿岸と似通った気候だった。
それゆえ、エクアドルではかなり品質の良い珈琲が採れるのだが、肝心のエクアドル人がその価値を知らずにおり、あまり世界的に有名ではない。しかし、遺伝的にはコロンビア種の流れを汲む、エクアドルの珈琲は世界の有名な産地の豆と比べても遜色ないものだった。

塚田たちが珈琲を楽しんで居る頃、ガラパゴス諸島北方98海里の太平洋上では、エクアドル海軍コルベット「Los Rios」が一隻の不審な貨物船をその視界に入れていた。「南昌23」とAIS(船舶情報自動通報装置)には表示され、船籍は北朝鮮になっていた。しかし、8海里ほどに接近し、見張りが双眼鏡で確認した船尾には何の旗も挙げていなかった。通常、公海で軍艦の接近を受けた場合、よほどの事情が無い限り、船尾旗を掲揚して自らの所属を明示するのが常識だった。「Los Rios」の艦長は、この貨物船への接近を命じ、場合に寄っては臨検を行う事を想定していた。「Los Rios」の行動は米国との協定に基づいた、麻薬密輸防止のためのものだった。以前は米国海軍艦艇が行っていたが、新しい大統領になってから、米軍が租借していたマンタ基地の租借延長を拒否し、その代わりに、それまで米軍艦艇が行っていたエクアドル200海里内の警戒をエクアドル海軍が行う、という協定を結んでいた。それでも米艦艇はやはり遊弋して漁船への臨検など行ってはいたが、この貨物船にであったのは「Los Rios」が最初だった。
貨物船に接近した「Los Rios」はVHF無線16Ch(国際呼び出し周波数)で呼び出しを行い、交信をしようとしたが、貨物船からの応答は無かった。AISに示されるMMSI(海上移動局識別番号)を用いたデジタル選択呼び出し(設置された対応無線機から警報が出る。)も行ったが、自動的に行われる受信応答すら無かった。
「Los Rios」は更に接近し、至近距離で並走しながら、拡声器で停船をを命令した。これはさすがに聞こえたらしく、ブリッジから顔を出した乗組員が驚いた表情ですぐに引っ込み、程なくして船足を落とした。停船を確認した「Los Rios」はブリッジから出て、こちらを見ている乗組員に、臨検を行うから、必要書類を用意せよ、と伝え、搭載しているゾディアック艇を下ろし、臨検要員が拳銃とFN-FALで武装して乗り込んで貨物船に向かった。
事態が動いたのは、貨物船に到着し、ゾディアック艇のもやい綱が貨物船に固定された瞬間だった。貨物船はゾディアック艇を引きずったまま、大きく船尾波を立てて、全力で逃走に移ったのだ。相当に強力なエンジンらしく、加速で最高速力36ノットを誇るコルベットが負けていた。引きずられているゾディアック艇には臨検要員の航海士官以下6名が乗り組んだままだ。「Los Rios」は直ちに追ったが、さすがの軍艦といえど想定外の事態への対処が簡単にできるはずもなく、貨物船に追随出来た頃には1海里近い差が開いていた。
「Los Rios」艦長は前部の76mm砲で貨物船前方に威嚇射撃を行ったが、ゾディアック艇がある限り、船体への直接射撃はできないと判っているらしく、速度を落とす気配は無かった。ゾディアック艇に乗り組んだ臨検要員は最初、貨物船の引き波で翻弄され、しがみついているのがやっとだったが、速度が上がるに連れ、引き波が船体から離れ、艇が安定しだした。動けるようになった臨検要員は艇を貨物船と結んでいるもやい綱を切断しようと艇首に向かって移動していたが、もやい綱が付けられている金属環は舳先より下にあるため、うまく切断ができないようだった。艦長は引き続き威嚇発砲を続けていたが、外海で揺られる僅か800トンのコルベットでは、ゾディアックへの誤射を恐れて、小火器ですら、船体へ向かっての射撃はできなかった。

今回はうちの娘の社交界デビュー記念。

今回はうちの娘の社交界デビュー記念です。小説は来週くらいに続きをうpできそう。

この国では女の子が15歳になるとお披露目パーティーをします。まだ14歳ですが、今日は同級の子のお呼ばれでパーティーに行きます。
たいした学校じゃないですが、一応、名の通った女子校なんで、新聞社や雑誌の記者が来て取材されるんだそうです。というわけで、先を越される前に、日本の皆様にお披露目。

多分、明日の新聞に写真が載ると思いますので、もう隠しても仕方がありません。まだまだ子供ですがどうかよろしく。

Juli-bestido1.jpg
Juli-Bestido2.jpg

グアヤキル帆船祭り

えっと、今回も小説じゃなくて、今やってるグアヤキルでの帆船祭の写真です。
すいませんが小説更新はもちっと時間ください。
エクアドルのGuayasuとベネスエラのSimon Borival

エクアドルの「グアヤス」とベネスエラの「シモン・ボリーバル」が仲良く並んだ写真。大統領同士が仲良しだしねぇ・・・・w
この2隻と「グローリア」の3隻は概ね準同型と言って良いかも。細部には違いがあるけれど、船体や帆走艤装はほぼ同じ。北南米3姉妹ですかね。w
ちなみに「シモン・ボリーバル」は舵角表示装置が壊れてるはず。直してくれって依頼が・・・海軍の工房の連中が今、直してるはず・・・

コロンビアの「グローリア」

コロンビアの「グローリア」は何回か日本へ行ってるはずなんで、おなじみの方もいるかも。3姉妹じゃ一番美人かな?いぁ、おいらがコロンビア美人が好きだからってわけじゃないっす。そんな気のせいでしょ、気のせい。

ウルグアイの「アルミランテ・ミランダ」

ウルグアイ海軍「アルミランテ・ミランダ」。これは日本の皆さんはまだ実物見てないはず。っても、単なるスループのヨットですから。マストは3本ありますけど、ガフリグですら無い。w
ただし、舷門にいた女性士官は美人ですた。w

ポルトガルの「サグレス」

大航海時代の英傑、ポルトガル海軍の練習艦「サグレス」。乗員の制服が往時を彷彿とさせるくらいレトロなのは伝統でしょうか。さすがに綺麗にしてます。これから日本へ行くみたいです。パナマ-アカプルコ-ホノルル-東京と回るみたい。期待してくらさい。

ブラジルの「シスネ・ブランコ」

今回、我が家族の目玉、ブラジル海軍練習艦「シスネ・ブランコ」。停泊地が「モリネーラ・ノボア」って言う、クエーカーの穀物埠頭で、狭いことと、規制があって、ろくな写真が撮れませんでした。
ただし、中身は別で、おいらたちは一応ブラジル人家族ですから、歓待されますた。案内のグレゴリオ軍曹と時間いっぱいまで楽しめました。中ではガラナが出て、娘が大喜び。乗った瞬間から、ブラジル音楽(フォフォーって言う東北部の音楽)出迎え。ついには女房と踊りだす始末。だって血が騒ぐんですよ。

「サグレス」の超近代的消火装置w

おまけ。ポルトガル海軍の最新式消火装置っす。ブラジルの「シスネ・ブランコ」でグレゴリオ軍曹が艦内消火装置の説明をしてくれたんで、ポルトガル海軍の最高機密である、この最新式消火装置を密かに情報漏洩しておきますた。www

っつーわけで、一応、見た船だけ。これ以外に、メキシコ海軍「クワモテック」、チリ海軍、日本ではおなじみの「太平洋の白鳥」「エスメラルダ」、オランダの民間帆船、などが入港してますた。あたしは出遅れ(出張)で土曜日の入港パレードを見られなかったのですが、明日、出航パレードがあるかも知れないので、早朝にいてきます。
っつーわけで、今回は帆船ですた。

ちょっとお休みです。

更新が遅れてて済みません。
ちょっと展開に行き詰まってまして、というのも、この国での動きが無くなっちゃって、ネタが切れてます。メヒコでの動きが凄いんで、そっちに振ろうかと思ったんですが、無理ありすぎなんで・・・・
すいません、もう少し待ってくらさい。

ところで、某2ちゃんの絵師さんの要望で南米のモチーフを貼ります。
ブラジル
チチカカ湖周辺 ペルー
エクアドル、高地、オタバロ付近
クスコ周辺 ペルー
っつーわけです。
それじゃすいません、少し待ってて下さいね。

小説もどき南米編

またまた間が開いてしまいました。
ちょと忙しすぎ。最大の問題は女房のブラジル里帰りだったりします。・・・orz
だって、エクアドルって国、南米で唯一、ブラジルへの直行便が無い国なんですよぅ・・・
だから、ブラジル里帰りは、ペルー経由かコロンビア経由、場合によっちゃパナマ経由
なんて事も・・・・
しかし、南米の航空運賃は高い!!娘と二人で$1500超えるって何よ・・・実質飛行時間は
7時間程度。ベタベタのエコノミーでこの値段。来月どーしよ・・・・・

っつーわけで、その24です。
エンリケの話で不思議だったのは、このコカ栽培の金主元になった中国人たちが、どのように金を得ている
のか判らない事だった。コカを栽培する農家に耕作のための機械などの資金を用立てし、農家が栽培したコカ
を組織に売って、その代金を返済に当てる、という図式は初期の頃成立しており、組織も資金洗浄の手間が
省ける事でそれを歓迎していたのだが、その後、返済に行き詰まった農家を栽培地ごと買取るような事が
頻発した結果、中国人自らが栽培地の所有者になったのだ。それでも、組織は中国人への支払いを洗浄されて
いない金で行う事で彼らを便利に使っていたのだが、ここに来て、中国人の持つ栽培地が全体の6割程度まで
増えた結果、栽培、収穫されるコカの量と、組織に販売されるコカの量に差がある事が判って来たのだ。
これは既存の栽培農家にも多かれ少なかれ有る事で、原因はコロンビア正規軍と戦場警備会社と言う名の
傭兵による枯葉剤散布による損失だった。しかし、中国人の所有する農場では、その損失を差し引いても、
説明できない差が発生していた。
その差分(場合によっては農場生産量の5割近く)をどのように処分しているのか、組織にも判らない状態
だった。栽培地に残っていない事は明白で、どこかに売っているのだろうが、現金でしか扱えない不法滞在
中国人が組織以外のルートでどのようにその代金を回収しているのかは謎だったのだ。
「なるほど。なんか裏がありそうな話ですね。セニョール・コルドバ」
「シ、セニョール・塚田。私が此処へ来たのは実はそのためなのです。彼らが接点を持っているのはエクアドル
国内なのです。コロンビアではビザを持たない彼らは、一切の公的な活動はできません。ですからエクアドル
国内にしか、かれらの金を扱える場所は無いのです。」
「すでに、その金の流れはお調べになったのですか?」
「いえ、これから着手します。といいますか、組織としてはコカの流れの方に関心が有りまして。」
「ああ、それはそうでしょうね。これまでの私の経験から、ひょっとすると中国大使館が絡んでいる可能性
があります。コロンビアの側でもその線を調べて見る事をお薦めします。」
「ええ、組織の情報力は国家に匹敵する、と言いますか、どこの国でも中枢に組織のシンパが入っています
ので、普通に隠す程度なら、簡単に判るのですが、今回のケースは全く表に現れません。どこかの国家規模
の組織が絡んでいなければ、簡単にはできませんので・・・・」
「つまり、エクアドル国内で中国系の国家組織が活動している、という意味ですか?」
「ええ、そうです。まだ証拠は握っていませんが、そういう情報はあります。」
「判りました。こちらもそれを念頭に置くことに致します。セニョール・バレンティエラ、今後はもう少し
細部の情報も交換した方が良さそうですね。私が尻尾を捕まえたい連中とセニョール・コルドバが追って
いる連中は接点がありそうです。ただし、私は海軍の保護下にありますので、不用意にそちらの情報を漏らさない
とも限りません。私に流す情報はその点、ご留意願えればと思います。」
「セニョール・塚田、同意します。私はあなたを信頼しておりますから、あまり心配しておりませんが、
あなたの安全のためにも、その点には注意致しましょう。」
塚田は、このバレンティエラの話で、さらに確信を深めた。今回のコヨテーロの件には、中国が国家として関連している。その確信だった。
しかし、なんとも凄い話だった。エクアドルでの出来事がコロンビア、メキシコ、カナダ、日本、中国と太平洋を挟んで5カ国に渡るのだ。塚田に喧嘩を売った組織は、そういう組織だった。しかし、もう少しやり方がありそうなものだ、とも塚田は思った。いくらなんでも、渡航歴も無い人間に、お前は中国で犯罪を犯したから出頭せよ、などという下手くそ極まりない脅しは、通用すると考える方がおかしい。先のコカ栽培地への浸透の手法からは想像出来ないほど稚拙に思われた。普通なら塚田に監視だけ付けておけば済む。ここまで出来る組織ならその位は簡単だろう。塚田が都合が悪い動きをしたなら、その時に消せば済むことだろう。さすがの塚田でもそういう方法を取られたら対応は不可能だった。それに、塚田のバックグラウンドさえ、きちんと調べて居ない事は、海兵が警備する塚田のアパートに直接人を送り込んで来るような手法や、トラックを突っ込ませて、結局、足を付けてしまったような手法に現れている。コロンビアでの浸透と比べると、随分と稚拙な手段に思える。
またメキシコでも、武闘組織に人を送り込むのは判るが、何も確実性の低いコヨテーロで無くとも、他に手段はあるはず。どうにもちぐはぐな事が非常に気になるのだ。

ちょと、小説もどき中断。アプロダで蹴られた写真うp。

っつーわけで、新年最初の更新がこれですんまそんw
ま、良い子たちですよって、許してくらさい。

看板娘ずw

小説もどき南米編

その22

「セニョール・バレンティエラ、コロンビアの中国人の話はどうなりました。?」
「ああ、あれですか。その後の話では、かなりな数が結局上手く行かず、逃げ出してるようですよ。」
「やはり。エクアドルでもご存知の通り、大統領の関税強化でほとんどが逃げましたから、コロンビアでも同じなんですね。」
「ええ。ただ全部逃げた訳じゃ無いようです。何人か残っているようですね。」
「しかし、しぶといですねぇ。」
「ええ、大したもんですよ。なにせ栽培地ですから、まともな道路すら無い場所ですんで。ああ、そうだちょうど良い、エンリケ、こっちへ来なさい。」
「シ・セニョール」
「私の部下ですが、丁度一昨日、コロンビアから来たばかりでして。」
「セニョール塚田、初めてお目にかかります。エンリケ・コルドバです。」
「セニョール・コルドバ、塚田です。セニョール・バレンティエラにはいつも助けて戴いております。」
「セニョール塚田、彼は栽培地の人間でしてね。彼から直接聞いた方が良いでしょう。エンリケ、お話しなさい。」
エンリケの話から、中国人たちが入り込んできたのは一昨年頃だった。エンリケの村はペルー、エクアドルとの国境に近い村で、FARCの支配地だった。ここで組織はコカの栽培をしていた。村への交通は事実上無く最寄のバスが運行されている街までは、徒歩か馬、最近ではオートバイが多くなったが、そのオートバイでも1時間近くかかる、最僻地だった。外国人といえば、コカ関係のペルー人、エクアドル人、ベネスエラ人くらいで、たまにFARCに参加しているメキシコ人やニカラグア人が来る程度でしかなかった。
この村のほとんどの住人が中国人など見たことも無かった処へ、数人の中国人が入り込み、村の教会の並びの家の庭先を借りて、バラックを建て、中華料理と靴、洋服を売り始めたのが最初だった。コロンビアはかなり出入国の管理が厳しく、また、ゲリラの存在が国内の都市部での不法滞在を不可能にしていたから、不法入国、不法滞在の中国人が僻地に逃げるのは当然だったが、さすがにコカ栽培地のような、国軍ですら足を踏み入れないような地域にまで来るのは普通の事では無かった。
中国人たちの商売は、それなりに繁盛した。なぜなら、コカの栽培地にはそれなりに金があったからだ。麻薬組織は生産のための出費には糸目をつけない。生産価格と末端価格の差が天文学的な事もあったが、輸送のための経費がコストの大半を占めるため、生産や精製へ多少金を落としたところで、全体に占める割合は微々たるものだったからだ。このため、栽培地は割と金回りが良かったのだ。
ほどなくして、中国人たちは雑貨も扱い出した。これらの商品は、全てエクアドルから持ち込まれていた。エクアドルとコロンビアの国境は川で、その水運が利用出来ること、中国からの輸入に規制があるコロンビアよりもエクアドルの方が輸入手続きが簡単で、その後の追跡も無いため、こう言う場所へ持ち込むにはエクアドルの方が都合が良かったからだった。そして、中国人たちはほどなく最初の店から3軒ほど先の空き地を買い取り二階建ての店舗兼住宅を作って本格的に商売を始めた。
そしてその頃から、この先に入り込んだ中国人を頼って、中国人が流入し始めた。最盛期には人口600人ほどの村に50人を超える中国人が居たらしい。彼らは来た当初は路上での靴や衣類を販売し、ある程度金が貯まると、元々の住民の庭先などを借りて、簡易な販売所を作り、そこで商売をしていたらしい。先に入り込んだ連中はこの新参に商品を卸す事でかなりな利益を得て居たようだ。
これが様変わりしたのは、エクアドルが国境の密輸取締を強化したのが原因だった。本来、これはエクアドル国内の家庭用ガス価格が政策的に安く抑えられていたのが原因だった。このため、価格の高いコロンビアへエクアドルからガスボンベが大量に持ち込まれ、国境付近に限らず、国境から離れたカリやメデジンなどでもエクアドルのガスが流通するようになったためだった。このため、一時はエクアドルでガスボンベの不足が起き大消費地であるグアヤキルなどでは、ガスボンベの価格が高騰、ガスそのものの価格は25Kgボンベ$6にも関わらず、新規に購入しようとすると、ボンベ代金が$100を超える、といった状況になったのだ。(交換用ボンベを持っていれば、ガスの値段$6で買える。)
このため、エクアドル政府はコロンビア政府からのクレームもあり、国境での密輸取締に本腰を入れる事になった。この影響で中国人たちの商売も商品が入らなくなり、多くが転業を余儀なくされた。
金のあまりない連中は、中華料理などに転業したが、すでに金を溜め込んでいた先発組はこのとき、コカの仕事に金を出すようになったらしい。
その後、エクアドルが中国からの安い靴、衣料などに高額関税を課す政策を始めた事で、この村での中国人の商売は破綻する。また、中華料理に必要な食材も国境密貿易の規制と、エクアドル、コロンビア間の紛争などが影響して入手が不可能となり、多くの中国人がこの村から逃げ出す事になった。しかし、すでにコカの商売に手をだしていた先発組の何人かは、しぶとく村に残り、エンリケが村を出る頃には、コロンビア系組織と同じ程度の金額をコカ栽培につぎ込んでいたらしい。
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